苦味は甘味の後味

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  だから、異常に 志緒の機嫌が気になった。 着替えさせたり メシ食わせたりして。 それでも俺が指図するままに 応じた志緒のぼんやり加減は、 昔のままだった。 そこではたと我に返る。 ……本人に訊けばいいんじゃねえの。 思った瞬間、 天井を仰いで顔を覆った。 1回きりと言わず けっこうな回数やったし。 志緒もそれを いやがらなかったし。 もう、ヨリが戻ったものと 判断してさ。 昔みてえに。 何故ここに来るまでに 思い及ばなかったんだろう。 仕事抜け出してきてまで。 「……拓海?」 怪訝そうな陣の声に、 うん……とだけ返事をした。 「あのさ、お前」 「なんだよ」 .
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