苦味は甘味の後味

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  朝から気持ちのいい 小春日和で、 連日の木枯らしに 凍えていた身体も 何となく緩む。 頭や気持ちまで やわらかくなるらしく、 スタジオに詰めるだけの 仕事を抜け出してみた。 とはいえ、 足を向けたのは 別のレコーディングスタジオ。 個人所有のスタジオは、 そこのオーナーと 仕事をしない限り 外部の人間は使うことができない。 オーナーと俺は旧知の仲で、 気軽に訪ねることを 許されていた。 同業で、友人で。 だがその気軽さから来る 狎れ合いを 仕事には持ち込まない。 互いのそのラインが とてもよく似ていて、 だから長く 付き合えているんだと思う。 「たのもー」 .
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