苦味は甘味の後味

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  クッと低く笑い、 陣は持っていたベースを 近くの椅子に置いてある ケースの中に戻す。 その流れで、 ミキサーのあちこちを 弄ってオフにした。 「玩具、持ってきた」 にやっと笑ってUSBを差し出すと、 陣の目の色が変わる。 「お前、なんてことを」 言いながら、 陣はUSBをひったくるように 奪った。 USBに入っているのは、 この前録ったばかりの 新曲のオケと 俺のヴォーカル音源。 仕事に狎れ合いは 持ち込まない── が、プライベートに 仕事を持ち込んで 狎れ合うことはままあった。 陣は結局のところ 俺以上に音楽オタクなわけで、 やつにとって商業で 売れるレベルの音は 格好の玩具なのだ。 .
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