苦味は甘味の後味

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  言外に含んだものを さっと汲み取った陣は、 流れる歌声の ボリュームを絞って 俺に向き直る。 「何だって? アノ時に女に泣かれたって?」 「ああ」 「無理やりやったとか、 そういう感じ?」 「いや、全然」 「お前の思い込みとかでなく?」 「一方的に思い込んで 突っ走るタイプに見えるか」 「……。 確信を得てから 突っ込むタイプかな」 「俺もそう思う」 ポンポンと そういう応酬があって、 陣と俺は思わず顔を見合わせた。 「じゃあ、単純に気持ちよくて 感極まったんじゃないの。 気持ちよくて わけ判んなくなった女の子って、 よく泣くよ。 それくらいの経験、あんだろ」 「まあ……」 .
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