苦味は甘味の後味

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  “よく泣くよ”と言い切った陣も、 大概けしからんと思うんだが。 言われなくても、 志緒の前に死ぬほど そういう経験はしてきた。 処女じゃないのなんて いくらでもいたし、 自分の体に妙な 自信を持つ女もそれなりにいた。 だから、この前 志緒が泣いたのも── そうだと思うんだが。 だが、どうも そういうことだけじゃない 気がして仕方がねえ。 なにと訊かれれば困るんだが、 俺と志緒はそんな 薄っぺらくねえと思うんだ。 それがただの願望じゃねえことは、 俺の体が一番よく知っていた。 志緒の中でぎゅうぎゅうに 締め付けられながら、 搾り取られそうな 脅迫めいた何かを確かに感じたわけで。 .
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