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海月の決意が表れた表情に昨日とは違うものを感じて、戸田が小さく息を吐くと「やだなぁ、参っちゃう 」と苦笑した。 「戸田さん……?」 「私ね、本当は分かってたの。でも、分かってても諦めきれなかった 」 ポツリと呟くように言った言葉に、海月はドキリとする。 このまま聞いていてよいのか躊躇っている海月に気付いていながら、戸田は話を明るく声を代えて続けた。 「昨日私が言ったこと、サト、ちゃんと誤解を解いた? 」 戸田の言ったことをきちんと理解して、迷った素振りの後、こくんと海月が頷く。 戸田が好きだった……、いや、今でも心の大部分を占めている男が何よりも大切だと言う、まだ少女の様に可愛らしいこの子は、わざと傷付けることを言った自分のことまで考えている。 私だったら、嬉しさのあまり、そこまで見えなかっただろう。 戸田は思った。 自分を選んでくれたことが誇らしく、選ばれなかった者の気持ちなど考えようともしないで、勝ち誇ったに違いない。 そんなことに、考えなど及ばず……。 実際、自分はそうした。
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