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何となしに覗いた部屋、誰もいないことをいいことに、共有のソファーに長い足を放り出して、彼はすぅすぅと寝息を立てていた。 ため息を吐いて、部屋の中に入る。 「もう、こんな所で寝てたら…… 」 つかつかと近寄って、けれど呆れて言おうとした『風邪ひくからね』の言葉は続かなかった。 窓から射し込む夕陽に、さらさらの薄い色の髪が蜂蜜色に溶けている。 髪と同じ色の睫毛は少しも揺れない。きっと、練習で疲れてぐっすりと眠っているのだろう。 優しいけれど、自分の中の、あるラインから先には決して立ち入らせない。 踏み込もうとすると、ピシャリと拒絶され、ずっとそれを壁のようだと思っていた。 フットボールはチーム競技だからか、人好きのする態度で振る舞ってはいるが、それでも、飢えた気迫は、全ては隠しきれない。 しかも今は、早く認めてもらう為に結果を出そうとしているからか、周りに気付かれない程度に、必要なもの以外を排除している節がある。 だからか、最近は、自分との間のその壁が以前より、より大きなものになっている気がしていた。 その理紫が目の前で子どものように眠っている。 理紫の無防備な姿など、見てはいけないものを見ているような気がした。
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