はんぶんの月〈3〉

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公開練習の見学に来た割りに、綺麗におしゃれした子達。

きゃあきゃあとはしゃぐ女の子達に圧倒されて、大きな瞳をぱちぱちとさせると、その中で１番髪の長い子が海月に話し掛けてきた。

緩やかに巻いた黒髪はお人形さんのようだ。

「ウチ達も、皆、サトくんのファンだよー。サトくんが好きだから、仲良くなったの 」

そう言うとピースをしながら、ピンク色の口唇の間から舌を出す。

「そ、そうなんですか？ 」

「やだぁ！ 敬語なんて使わないでよ、同じファンなんだからっ！ ねぇ、名前何て言うの？ 私、ナナ。 」

「ナナ……さん？ 」

初対面の子に、いきなり名前を聞かれて、名乗られてビックリしてしまう。

どうして、ここに着いたばかりの自分がこの子達に声を掛けられたのかも分からない。

「あの、何か、私にご用ですか？ 」

初めて来た訳ではないけれど、詳しい訳でもない。

何か聞かれても、きっと答えられない。お手洗いの場所さえ、分からないし……。

すると、ナナと言った子の隣りにいた、ボブカットの眼鏡を掛けた子が、戸惑う海月を見透かしたように言った。