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「じゃあ、気をつけてね?」
そんな彼女の声に苦笑しながら彼は「じゃあな」と返し車を走らせる。
「ついでだから」なんて言葉が嘘なのを知っているけど、あれから毎日のように学校まで送ってもらうのが日課になってしまった。
本当は「送らなくてもいいよ」って言いたいのに――。
「ヒナ、ボーっとしてたら轢かれちゃうわよ?」
後ろから掛けられる声に振り向けば、すっかり夏スタイルの唯の姿。
「おはよ、唯」
「はいはい、おはよ。朝からラブラブね?」
呆れるように笑う唯に「そんなんじゃないもん!」と頬を膨らませ、二人はキャンパスに足を踏み入れていった。
大学の授業なんてほとんど出席なんて重視しない。
進級を決めるのは抜き打ちでやられるテストやレポート、そして期末のテストくらい。
それでも、出席を取ったりする教授もいるわけで……。
「この授業、ずーっと代返しててあげたのよ?」
「……うん、ありがと」
「ノートも取ってあげてたし」
「……うん、ごめんね」
「あぁ、暑いわね」
「……うん、ごめんさない」
「ヒナのせいじゃないでしょ?」
「……あ、そっか」
そんなこんなでヒナは以前と変わらないキャンパスライフを送っていた。
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