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チカチカと今にも消えそうな蛍光灯。
隣の部屋のテレビの音が筒抜けな薄い壁。
吹き付ける風にガタガタと音を立てる窓ガラス。
一歩踏み出せばみしみしと今にも底が抜けそうな音を出す床。
そんなボロアパートの一室。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
そんな一室に住む俺の目の前にいるのは、この部屋には全く似合わない男性。
アッシュ色に染められた髪は後ろに撫でつけられ、引き締まった身体を包むのは高級感溢れるダークグレーのスーツ。
切れ長の黒い瞳に見つめられれば背筋を伸ばさずにはいられない。
じっとこちらを見つめるその人に、無意識に唾を飲み込んだ。
「・・・・・・」
「えっと・・・ひさし、ぶり?です、叔父さん」
苦し紛れにヘラリと笑いながらそういえば叔父さんの眉間に微かに皺がよった。
こ、こわい・・・。
ただでさえ強面なのにそんな眉間に皺まで寄せたら駄目だって。
内心怯えながら、とりあえずヘラヘラしていると徐に叔父さんが口を開いた。
「叔父さんって呼ばれるほど年老いてねぇよ」
そう言って、叔父さんは苦笑する。
先ほどまでのピリピリとして空気が一気に消えるのを感じた。
な、なんか見た目よりこわくない・・・かも。
「・・・じゃ、じゃあ、宗佑さん、で」
「!」
恐る恐ると叔父さ、宗佑さんの名前を呼べば何故か驚いた顔をされた。
な、名前間違えた??
顔から血の気が引いてくのを感じながら、どうしようとりあえず謝ったほうがいいのかなんて考えていると、ボソボソと話し出す声が聞こえてきた。
「俺の名前、覚えてたんだな」
「はい・・・」
一応親父の弟だし、ね。
まぁ俺は会った記憶がほとんどないんだけどね。
最初玄関開けてこの人がいた時は親父が変なところから金借りてたのかと思ったよ。
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