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「葬式、行けなくて悪かったな」
「・・・いえ」
実は先週、親父が死んだ。
俺は元々母親がおらず親父と二人暮らしだった。
だから葬式は親戚の人達に手伝ってもらって行った。
親父の仕事関係の人や同級生だった人達が来るなか、宗佑さんは姿を見せなかった。
それを、わざわざ謝りに来てくれたのだろうか。
「お仕事、お忙しいんですか?」
「あぁ・・・まぁ、そうだな」
宗佑さんは顎に手を当てて言った。
そうだよな、なんか社長とかやってそうだもんな、この人。
「それを言いに来てくれたんですか?」
「まぁ、それもあるが護の様子を見に、な」
宗佑さん、凄く律儀な人だ。
最初凄い失礼なこと考えてたな、俺。
「わざわざありがとうございます。俺なら大丈夫ですよ」
「・・・・・・」
安心してほしくて、笑って言う。
が、宗佑さんの顔は晴れない。
まだ何か心配なのかな?
「お金だって、多少は蓄えがあるし。俺、バイトしてますし。それに親戚の人達もついてくれてますし」
だから、俺なら大丈夫ですよ。
そういう意味を込めてまた笑った。
「・・・護」
ブー ブー ブー
宗佑さんが俺の名前を呼んだところで、マナーモードの音が響いた。俺は携帯持ってないし、宗佑さんのものだろう。
「鳴ってますよ」
「・・・・・・」
だが、宗佑さんは一向に携帯を探す素振りを見せない。
さっきからずっと鳴ってるということは、電話なんじゃないのか?
「・・・宗佑さん」
「・・・・・・チッ」
じっと見つめていると宗佑さんは小さく舌打ちをして、横に置いてあったコートのポケットから携帯を取り出した。
そしてすぐにまたポケットにしまってしまう。
「出なくていいんですか?」
「問題ない」
仕事関係の電話じゃないのかと思って尋ねるが、宗佑さんは首をふった。
まぁ本人が問題ないっていうなら大丈夫なんだろうな。
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