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しかし幸いな事に俺の進行方向と彼ら追っ手が俺を追いかける方向は同じ方向で、彼らは俺の脚力を覚醒させる起爆剤に成り下がったというわけだ。
尤も、今の俺はマトモには走れない。右足はズキズキするし、少しでも気を抜けば直ぐに倒れてしまう事だろう。
でも、俺は走っている。下らない義務感や、正義感からなる行動でない事はよく分かっていた。
これは…嫉妬だ。
彼に想われ続けている“彼女”の存在が疎ましかった。
俺を猫としてしか見てくれていなかった彼は俺が人間だったら。俺が単なるオスの人間だったら俺と一緒に暮らしてくれただろうか。答えはきっとYesだろう。とても短い時間しか彼という人間を知る機会はなかったが、彼の人間性は 俺が一番良く知っているという自信があった。
彼には友達がいないという情報から得た安心感。彼に訪れるのは孤独な死。絶望。
その筈だった。しかしその期待は最悪の形で切り捨てられる。彼には恋人がいた。
勿論そんな事を俺は聞いた覚えがない。
彼の隣にいれるのは俺だけの筈だ…。俺以外のヤツが隣にいる事など…絶対に許せない。
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