K

4/12
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 人には誰にだって生きる意味があると聞いた。  ならば、猫である俺にも意味はあるのだろうか。もしかして、この黒猫であるというのが意味で、畏怖や恐怖を人間に伝えるという役割を俺は任されているのだろうか。  俺の役目というはヒドく滑稽で、それでいて他人任せだった。  それによって俺に起こる害を神は考えていないのだろう。きっと神は平等なんだろう。  だから神は何もしない。人に幸福を与える事も、不幸を与える事も。ならばそんな神に存在意義はあるのか?  右足の痛みが少しずつ足の付け根にまで上ってきた。  憖痛みが鈍い分気づかなかったが、足の痛みは刻一刻と俺の体力を奪い、足を動かすという行為自体を頭から忘れさせていた。  このまま死んでしまおう…。  死が怖いと思った事は一度もない。  ただ人間から逃げてきたのは希望とかそういった偽善めいたモノじゃなく、単純に本能だった。痛いから逃げる。追いかけられたから逃げる。それだけの事。  あの時ああすれば…なんて殆どの生物が考えうる疑問すらも俺には発する事はできない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!