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俺には彼にそれを尋ねるだけの知能も技術もなければ度胸もないのだから…。
「あー、右足はやっぱダメだな。多分、一生動かねぇよ。歩くくらいなモンかねぇ」
再び連れてこられた病院で俺は診察を受けていた。
相手はやはりこの前と同じの“彼”と同じくらいの歳の青年。
「取り敢えず歩くのに支障は然してないだろうな。ただ、一生走るのは無理だ」
青年は“彼”にそう言うと、彼を見据えて続けた。
「なぁ、お前、以前みたいな絵を描かないのか? 少なくとも今のその汚らしい身なりは何とかできると思うぞ?」
しかし彼は哀しそうに首を横に振ると、お礼を言い、俺を抱き家へと帰った。
家に帰ると、彼は倒れた。
俺をこの場に連れてくる為に。
勿論彼の様子がおかしいのは以前から感じていた事だったし、そもそも様子がおかしいのは今日だけではなかった。熱もあるようだったし、呼吸も荒い。
前々から分かっていた事だった。猫である俺に何もできないのは分かっていた。
でも、何だろう。この虚無感。
そして額が熱い。目頭も同時に熱くなった。
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