プロローグ

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また、朝が来た。 朝はいつも無理矢理身体を起こさなきゃいけないから憂鬱だ。 今日も一階からは、「結月ーっ、起きなさい」と、私を呼ぶ甲高い声が聞こえてくる。 目覚ましよりも何倍も心地悪いのに、シャキッと目が覚めるのは何故だろう。 ああ。起きたくない。逃げたい。 仕方なく起こした身体を引きずるように歩き、ゆっくりと階段を降りて台所に入る。 パジャマのまま椅子にどしりと腰掛けると、ぼんやりとする隙もなくお母さんが駆け寄って来た。 そして、起きてきたばかりの私の前に大学のパンフレットをずらっと並べる。 「そろそろ進路ちゃんと考えなくちゃと思ってね。お母さん、たくさんパンフレット貰ってきたから、今度学校見学行きましょう」 私に、何がしたいかも訊かずにパンフレットを開き、次々と学校を勧めてくるお母さんの生温い息が額にかかる。 私はその息を交わすことに精一杯で、彼女の言葉には、適当に相槌を打つことしかできなかった。 そんな私の態度に、彼女が怒り出すのもつかの間。 「もう! 聞いてるの!? 自分の事なんだからね! 」 キンと、フォークで皿を突くような音が頭に響いた。正直、起きたばかりで目もちゃんと開かないのに、本当に面倒くさかった。 朝食を食べ終え、家の門を出た時には、すでに体力が半分に減っていた。 自転車通学が許される距離なのだけど、早く家を出たかったから歩いて学校へ向かう。 地面を見つめながら、いつもの道を歩く。 いつからだろう。 下ばかり向いて、歩くようになったのは。 いつからだろう。 何をしても、面白くなくなったのは。 雲一つない快晴が、背を丸くして歩く私を笑っているみたいに感じる。 だから私は、今日も空を見上げることができなかった。
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