君と空を見上げたい。

プロローグ

学校に着くと、クラスの女子が誰かの噂話をしていた。
おそらく、田中君のことだろうと思い、私は体を預けるように席に着いてスマホを眺めた。
隣のクラスの田中君は、変わっていると言われている。
自分じゃない誰かの噂話は、あまりいい気分はしないけれどホッとする。
だけど、彼と私の名前は似ているから「 田中」と聞こえると、自分のことを言われている気がしていちいち気になってしまうので、それだけが嫌だった。

田中君は、身長百七十センチぐらいの少し細めの撫で肩で、髪の毛は焦げ茶色。天然パーマなのかパーマをかけているのかはわからないけど、触るとふわふわしていそうで、前髪は目に入りそうなくらい長かった。
目鼻立ちのはっきりした顔ではないが、悪くない顔立ちで、見ためは本当に普通の男の子。

そんな彼が、なぜ変わっていると噂されているかは、彼の奇妙な行動が理由だった。