Monte Carlo -1-

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―――目眩がしそうだ。 そのピン札の匂いは、世界中のどんな煙草よりも良い香りで、そして中毒性が高い。 麻薬のようなそれが充満した車内に、覆面を被り、サブマシンガンを手にした相棒……リズが息を切らせながら飛び込む。 「やぁ。ご苦労だったね、リズ」 「うるせぇランディー! さっさと出せ!!」 「はいはい、分かってる」 あらかじめギアをローに入れてアクセルを踏んでおけば、ランディー・ミゴール……彼がしたのはクラッチを繋ぐことだけだった。 ガリガリ、というクラッチがミッションを鷲掴む音。 キャァアア、というタイヤが路面を引っ掻く音。 その発進は発車というよりも、もはや発射だった。 ポルシェ・718 ケイマン。 伝統ある流線型のボディーが纏うのは、コンテンポラリーな艶のある赤のグロス塗装。 犯行用に盗んだ車だが、そのステアリングはまるで自らの手のように馴染んでくる。 ポルシェ・718 ケイマン GTS ¥10,500,000image=508989915.jpg
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