人生最大の危機

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ついあのヤクザさんの方が気になり、視線を何度か送ってしまう。 あんな風に感想を言ってもらえることは、常連さんでもほんの一握りしかいないので、 常連さんでないあの人がああやって話してくれたことが、とにかく嬉しかったから。 厳つい強面のヤクザさんでも、出会いは大切に、だ。 この間と同じ約十五分後、ヤクザさんはお盆に乗っていたその全ての料理を平らげレジに歩いて行った。 本当はレジを打ってまた話を聞ければいいなと思うけれど、 通っている注文を早くこなさなければならない。 レジを打ちに行った知世さんが、ヤクザさんと何か喋っている。 何だろ。 すごく気になる。 めちゃくちゃ気になる。 チラリとこちらへ視線を送って来たヤクザさんは、優しい笑顔で軽く会釈をした。 「ごちそうさま」と言いながら。 「ーーーーっぁ、ありがとうございました!」 去って行く後ろ姿を見つめながら、また大きく声を張り上げてしまう。 その後はもういつものように慌ただしく時間が過ぎて行き、ヤクザさんのこともすっかり忘れてしまっていた。
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