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「っぜ、ゼンさんっ、」
「ヤろうと思って家まで来たんだよ。でも問題が浮き彫りになり結局ヤらなかった」
「ゼンさっ……も、問題??」
近過ぎる顔にパニックになりながらも、ゼンさんの言葉が引っ掛かった俺はグッと眉根を寄せる。
けれど腰に回されていた手がスルリと脇腹に触れ、その感触に驚いて身体がビクッと震えてしまった。
ああ、ちょっと待って。
こんな体勢じゃ冷静に考えられないよ!
「ああ。まぁ……なんだ。俺も時田も同じ、ヤる側だった」
「…………ーーーーヤ……」
ヤる側、って。
いや、意味は理解した。
つまり、押し倒す側……って事だよね?
その…………俺とゼンさんで言えば、ゼンさんの方で。
時田さんもそうだと。
「……どっちが下になるかって時、お互いどちらも引かなかった。で、結局やめたんだよ。なんつーか……あいつは俺と似てんだよ。色々とな」
「………………」
あまりにも生々しい事実に顔が強張ってしまう。
二人が関係を持たなかったって分かって、すごく嬉しい反面何だか複雑だ。
一度は持とうとした訳だし。
けれど、やっぱりここは思いとどまってくれた二人に感謝するべきなんだろう。
そして、気になって仕方なかった思いを口にしようかどうしようかすごく迷ってしまう。
こればかりは、時田さん本人にしか分からない事なんじゃないだろうか。
ゼンさんを、どう思っていた……どう思っているのか、なんて。
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