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「……納得行ってねぇ顔だな?」
困ったような顔で覗き込んで来るゼンさんに、俺は複雑な笑みを返す。
「言えよ。何でも答えてやるから」
「…………」
時田さんの気持ちは分からないままだけれど、聞きたかった事実を知る事が出来た瞬間やっぱり自分は安心したんだと思う。
ずっと感じていた不安や嫉妬心が随分と薄まり、今にも消えてなくなってしまいそうだ。
それと同時に、自分のゼンさんに対する想いは改めて強固な物へと進化していく。
ちゃんと真正面から、誠実に事実を伝えてくれたゼンさん。
俺の格好悪い部分も多分、受け止めてくれた……んだよ、ね?
少し揺れる目でゼンさんの優しい瞳を覗くと、ふわりと温かい愛情を感じる事が出来る。
それが嬉しくて幸せで、俺はふにゃっと笑ったままゼンさんの首へ両腕を回した。
「…………も、大丈夫です…………ゼンさん、好き」
「ーーーー…………」
強く抱き締め返され、耳元に熱い吐息がふわりとかかった瞬間無意識に肩をひそめた。
全身に感じるゼンさんの体温がすごく心地良い。
自分の体重が全てゼンさんの身体へかかっているというのに、ゼンさんはそれを微塵も感じていないようだった。
大きいな、ゼンさんの身体。
俺もまだ成長するんだろうか。
身長は数年前から止まっているけれど、筋肉なら鍛えれば何とか……。
「…………………………?」
ふと。
自分の足に違和感を感じる。
なに、か。
硬いものが。
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