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「ーーーーーーッ、」
それが何か気付いた瞬間、心臓がドッと大きく飛び跳ねる。
もしかしたら身体から突き出て、ゼンさんの胸へぶつかってしまったんじゃないだろうか。
それぐらいドキッとした。
だって。
だ、って、これは。
「っ……~~~~、ぜ、んさん……あの、あ、ありがとうございました」
プルプルと小さく震えそうな腕を何とか首から外し、そのままベッドに両手をつき自分の身体を起こそうと踏ん張る。
けれど腰に回されていた手は強く俺を拘束しており、上半身だけが反り返るように起き上がってしまった。
「も、もう大丈夫で、す。あの、変に不安になってしまって、すみませんでした……」
「いや、いいよ。そうやって話してくれて嬉しかった。俺にとっちゃ過去も過去ですっかり忘れていた事だったが……なぁ、悠之介?」
「は、はい?」
会話をする中で、俺は懸命に自分の身体を何とか起き上がらせようと試みる。
ゼンさんの上に乗っかっていた両足を下ろそうとずらすと、何故か余計リアルにゼンさんのそれが足へ当たりグッと唇を噛み締める。
しまった。
硬直してしまった。
「一応言っておくが、とっくに全部手は切ってるから」
俺の目を見つめながらハッキリとそう言ってくれたゼンさんに、俺は戸惑いながらも小さく頷いて返す。
だって、正直に嬉しいと思う。
そして。
足が、当たってる。
思い切り。
え。
ていうか、擦り付けて来てない、か?
これに似たような事、前にもあったような気がするのは気のせいだろうか。
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