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ふと視線が涼香に移る。
まだ可愛らしい容姿をしているな……程度に思っていた相手だったが、好きになった途端に俺の目に映る涼香は一変した。
この世の何よりも可愛く美しく、俺の中で最上位に位置してしまう程に一変した。
それと同時に押し寄せてくる様々な欲求。
会話、食事、デート。
数ある時間を共有したいとまで考えてしまい、周りの事が見えなくなるぐらいだ。
自分で言うのもなんだが、これはかなり重症だと思っている……。
「はぁ……」
自然と出るため息は虚空に消え、俺に精神的負荷がかかっていることを告げてくれる。
その負荷に耐えられなくなったのか俺の脳は今すぐ寝ろと命令を下し、瞼はゆっくりと閉じていき、眠りに就くまでに時間は要さなかった。
「大我、起きてください」
誰かが俺の名を呼んだ。
ボヤ~っとした意識の中、顔を上げていくと涼香と九美が俺の席の前で鞄を手にした状態で立っていた。
「ん……? どうしたんだ……?」
「どうしたじゃないわよ。さっさと行くわよ」
ん? 行くって……どこに?
俺が疑問に思ったのも一瞬で、俺達三人が集まり、行くと言えばヘルグリムしかない。
と、自分の中で答えを見出した俺はゆっくり立ち上がり鞄を持ち、二人を追う形で後ろに続いた。
校門を出て人気の無い所までの移動中。
俺は大きなあくびをしながら二人の後ろを歩いており、聞こえる会話を耳に入れていた。
「でもね、そうするとバランスが悪くなるのよ」
「確かに水閉栓は強力ですが、そのバランスを保つのは難しいでしょう。私も何かサポートができればいいのですが……」
「それこそ不可能に近いわよ。水閉栓は他の技とは少し違って――」
女子高生が前に二人。
片や俺の意中の人。
片や世界を牛耳るパーフェクト美少女。
一般人からしたら、そんな二人からは想像できぬ会話に聞こえるかもしれないが、俺からしたら至極当然の会話であり、何一つ注意を引くような事はない。
「ところで涼香。話は変わりますが、涼香に意中の人はいないのですか?」
一般人からしたら、そんな二人からは想像できる会話に聞こえるかもしれないが、俺からしたら予想外すぎる会話であり、一瞬で俺はその会話に全神経を注ぐ体勢でいた。
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