第一章 恋心

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風呂から上がった俺は部屋着に着替え、ベッドに腰を下ろす。 と、同時に後ろに大の字に寝転がり、風呂場の次は部屋の天井を見る。 俺が今感じてる幸せ……。 それは間違いなく、ヘルグリムにいる皆のお陰だ。 皆がいるから、俺は笑える。 皆がいるから、俺は戦える。 皆がいるから、俺は強くなれる。 半ば自己暗示のような思考を頭の中で巡らせた俺は、ベッドから勢いよく飛び上がり、ふと思い出した事の確認をするべく部屋を出た。 部屋を出て最初に見たのは涼香の部屋の入口だった。 当然涼香が出てくるハズもなく、俺は涼香の部屋の前を通り過ぎて、ある場所へと向かっていく。 すると突然―― 「うおっ!?」 後ろから背中……というか、腰辺りに衝撃が加わった。 気付けば自分の腰に回されている両腕。 靡く金髪。 「パパみぃ~つけたっ!」 そう、そこには優里がいた。 俺が優里を傷つけてしまった後、優里とはしっかり仲直りが出来た。 俺の誠意が伝わったのか、優里は全く根に持っている感情を見せない。 というか、ここは子供だから純粋無垢と言ったところか。 「どうした? 突然飛びついてきて」 「ううん! たまたま見つけたから飛びついただけだよ?」 何とも子供らしい返答だ。 優里と遭遇した結果、優里も一緒に連れていくことに決めた。 右肩の上に乗せた優里の体重は軽く、優里は俺の頭と手を掴む事でバランスを保つ。 そんな状態で歩いて行くと、目的地に到着した。 俺は優里に肩の上から降りてもらい、目前の扉をノックする。 「構わんぞ」 中から聞こえてきた声。 それを確認した後、俺は扉を開いて中へ入っていった。 「どうしたんじゃ? 何か用か?」 「ああ、少し気になった事があって」 俺はとある事を確認したくて、啓の部屋を訪れたのだった。 啓は俺にソファに座るようジェスチャーで教えてくれて、俺と優里は指示された通りソファに座る。 と思いきや、優里は俺の膝の上に乗ってきた。 「えへへ~……」 満面の笑みで微笑みかけてくる優里の頭を軽く撫で、向かい側に座った啓を視界に捉え、俺は口を開く。 「啓……ヘルグリムの中で絵画って見た事あるか?」 そう、俺が聞きたかったのは、まさにその事だった。
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