第一章 恋心

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「ん?絵画じゃと?」 すると啓は頭上に疑問符を浮かべ、少し沈黙をした後に口を開く。 「いや……知らぬが……。それがどうしたのじゃ?」 やっぱり知らないか……。 薄々感じていた事だったけど、あの時に見た絵画は普通の絵画ではなかった。 それに何度も通っている道だったし、あの瞬間だけ誰かが壁に飾り付けているなんていう事もあり得ないだろう。 そしてその絵画は今は消えている。 アモンとの一件の後、その絵画を再確認しようと同じ場所に訪れてみたが、その絵画は存在を消していた。 「いや、ただ気になった事があって……」 「ふむ……」 啓は顎に蓄えた白い髭を右手で触りながら少し考える素振りを見せる。 そんな啓を見た優里が、啓と同じ様な仕草を取り、可愛らしい声を出来る限り唸らせながら啓のマネをする。 「絵画を見た……という話は初耳じゃが……」 少しして啓は視線を下に向けながら声を発する。 「変わった壺を見た……という話なら聞いたような……」 「変わった……壺?」 ここのヘルグリムには装飾品のような物が数多くある。 それこそ壺だったり絵画だったり。 「いや……そんな話……あったかのぅ……?」 「……んん?」 すると啓は突然ボケ始めたかのように、首を傾げ、眉間に皺を寄せながら、また考え始める。 そしてそれを見ている優里も、同じような素振りをする。 「……すまぬ。少し記憶が曖昧でな……。何か思い出したら連絡するようにする」 「うん、わかった」 結局、あの時見た絵画については何の情報も得られない結果に終わった。 けど、聞きたい本題は寧ろここからだった。 「啓、あと一つ聞きたいんだけど……」 「何じゃ?」 「祖人がゴエティアを抜ける場合、どうなるんだ?」 俺がその言葉を発すると同時に、啓は下げていた視線を俺に当ててきた。 「大我……まさか、お主……」 「いやいや!違うって!俺じゃないから!!」 一瞬疑われてしまったが、すぐに訂正する事で何とか誤解を解く。 と、焦った俺を見て口角が少し上がった啓。 軽くからかわれたと、後になって気付く。 「ある奴が、昔はゴエティアにいたって言ってたんだ……」
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