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「ですが大我。その約束は少し先になりそうですが、よろしいですか?」
「ん? ああ、別にいいよ」
まぁ九美には家の事情があるだろうし、ソロモン72柱もいつ来るか解らない現状で、ゲーセンに行く時間を作る事自体難しい事なんだろう。
それに、俺も誘うタイミングを見計らうべきだったな……。
少し反省していると俺の背後から物音が聞こえ、振り向くと涼香が小説を床に落としていた。
それに気づいた俺はその小説を取り、軽く埃を掃った後に涼香に渡した。
「ほれ」
しかし涼香は小説を手にせず、俺の目をジーッと見つめたまま動かない。
…………俺、何か悪い事した?
数秒間そのままでいると、涼香はやっと小説を手に取り「ありがと」とか細い声で返事をした。
その声を聞いたと同時に先生が教室に入ってきてHRが始まった。
人間の環境適応能力は侮れない。
それは人類である俺達が一番知っている事だろう。
しかし学校の授業というのは、どうも馴れない……。
っていうか、ただ単に苦痛だ……。
「ではこの問題を……」
英語の先生の視線がクラス内をゆらゆらと彷徨い、誰に当てるかを考えていた時、ふと俺と目が合ってしまった。
その瞬間に俺は視線を逸らしたが、逆にまずかったのかもしれない……。
「では……彩蓮。ここを訳してみろ」
「……はい」
だが問題は俺に当たる事なく、隣にいた涼香に当たった。
当てられた涼香はゆっくりと立ち上がり、先生に当てられた英文を訳す為に教科書を持ち上げる。
そして口を開き、英文を訳そうとした瞬間、何故か固まってしまった。
「ん? どうした、解らないのか?」
「いえ……」
先生が問うと涼香は軽く否定し、英文を訳していった。
「あなたの気持ちは受け取れない。私には他に好きな人がいるから……。本当にごめんなさい……。でもあなたの気持ちは嬉しかった……ありがとう……」
俺はその英文を訳す涼香を見て、固まってしまっていた……。
まるで、俺の気持ちに対して言っているかのような……。
そんなハズはないのに、俺の心はズキズキと痛んで仕方なかった。
そんな時だった。
俺がそのままでいると、涼香がこちらに振り向き、二入の視線が交わった。
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