第一章 恋心

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「ですが大我。その約束は少し先になりそうですが、よろしいですか?」 「ん? ああ、別にいいよ」 まぁ九美には家の事情があるだろうし、ソロモン72柱もいつ来るか解らない現状で、ゲーセンに行く時間を作る事自体難しい事なんだろう。 それに、俺も誘うタイミングを見計らうべきだったな……。 少し反省していると俺の背後から物音が聞こえ、振り向くと涼香が小説を床に落としていた。 それに気づいた俺はその小説を取り、軽く埃を掃った後に涼香に渡した。 「ほれ」 しかし涼香は小説を手にせず、俺の目をジーッと見つめたまま動かない。 …………俺、何か悪い事した? 数秒間そのままでいると、涼香はやっと小説を手に取り「ありがと」とか細い声で返事をした。 その声を聞いたと同時に先生が教室に入ってきてHRが始まった。 人間の環境適応能力は侮れない。 それは人類である俺達が一番知っている事だろう。 しかし学校の授業というのは、どうも馴れない……。 っていうか、ただ単に苦痛だ……。 「ではこの問題を……」 英語の先生の視線がクラス内をゆらゆらと彷徨い、誰に当てるかを考えていた時、ふと俺と目が合ってしまった。 その瞬間に俺は視線を逸らしたが、逆にまずかったのかもしれない……。 「では……彩蓮。ここを訳してみろ」 「……はい」 だが問題は俺に当たる事なく、隣にいた涼香に当たった。 当てられた涼香はゆっくりと立ち上がり、先生に当てられた英文を訳す為に教科書を持ち上げる。 そして口を開き、英文を訳そうとした瞬間、何故か固まってしまった。 「ん? どうした、解らないのか?」 「いえ……」 先生が問うと涼香は軽く否定し、英文を訳していった。 「あなたの気持ちは受け取れない。私には他に好きな人がいるから……。本当にごめんなさい……。でもあなたの気持ちは嬉しかった……ありがとう……」 俺はその英文を訳す涼香を見て、固まってしまっていた……。 まるで、俺の気持ちに対して言っているかのような……。 そんなハズはないのに、俺の心はズキズキと痛んで仕方なかった。 そんな時だった。 俺がそのままでいると、涼香がこちらに振り向き、二入の視線が交わった。
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