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さっきまで開いていた窓から、部屋の中へ入り込んでしまったのだろうか?
アンはそろりと起き上がると、扉に耳を当てた。
誰の声も聞こえない。もう、みんな寝ちゃったんだ____そう確信すると、急いで、けれども、なるべく音を立てないように気を付けて、出窓を開いた。
ひらひらと羽根を羽ばたかせながら、青い蝶は外へ飛び立った。
よかったと胸を撫で下ろす。蝶の飛んでいく方向を追っていくと、少女が立っているのが見えた。
歳の頃はアンと同じ位が、少し上かもしれなかった。アンよりも背が高い。濃紺の長い髪を夜風に靡かせ、透き通った宝石のような空色の瞳をこちらに向けていた。
初めて見る子だ。村の子じゃない。
どうして外にいるの?どこからか迷い込んで来てしまったの?
少女は露草色の柔らかそうな生地のワンピースを着ていた。スカートの裾がひらひらと翻る様子は、彼女の傍らで舞う蝶のように見えた。
月明かりに照らされて、ぼんやりと浮かぶ青白い肌、少女は確かにアンを見て、微笑んだ。
「綺麗……」アンは思わず口にしていた。
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