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「また怒られてだろ?学校に居眠りしに来てるのかって」
笑い混じりの声に振り返ると、そこにはカフ・シエルが立っていた。
彼はアンの同級生で、村長の孫だった。明るく正義感の強い少年で、教室ではみんなのまとめ役だ。
「それより、シエルの犬をどうにかしてよ。最近、私を見かける度に凄い勢いで吠えてくるだから」
シエルに笑われたのが恥ずかしくて、アンはそう言い返した。
「アバドンが吠えるって?普段は寝てばっかいるのに……オカシイな」
シエルは腕を組みながら首を捻った。何かを思い出したように目を見開くと、アンにそっと耳打ちした。
「そういえば、うちの親父が言ってたんだけど、昨日の夜遅く、湖の方に向かうアンを見たって。アン、もしかして村の掟を破って、夜中に出歩いているのか?」
「そ、そんな訳ないじゃない!」
アンは思わず声を荒げた。シエルは「そんなに怒らなくても」とたじろぎ、「ごめん、やっぱり親父の勘違いだよな?」と、すぐに納得して頷いた。
「でさ____」
話題が変わった所で、アンは内心、胸を撫で下ろした。
____ユリシスの事は誰にも知られてはいけない。
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