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アンは振り返り、ユリシスの視線の先を追った。
_____バウッ、バウッ、バウッ
静かな闇の奥から、獰猛な獣の声が、湖畔に響いた。
ガサガサと木の葉を揺らしてこちらに向かってくる足音に、アンとユリシスは恐怖に固まった。
「アン、伏せろっ!」
突然、太い声が響き、アンは反射的に地面に跪いた。
その瞬間、銃声が響いた。
火薬の残り香が鼻を掠める。
一体何が起こったのか、アンには訳が解らなかった。
バシャンと何かが落ちたような大きな水音に、アンは顔を上げた。
水面にユリシスが浮かび上がる。胸の辺りに銃弾が撃ち込められていた。
「ユリシス!ユリシス!」
頭が真っ白になったアンは、立ち上がり、湖に飛び込むと、ユリシスの元に急いだ。
「やったぞ!遂に、悪魔をこの手で仕留めたぞ!」
ルピナスの陰から、笑い声を上げながら現れたのは、シエルだった。
傍らにはアバドンを引き連れていた。紫紺色の大きいシエルの犬だ。
シエルは、ユリシスを撃った銃を腰のベルトに収めると、水中にいるアンに手を差し伸べた。
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