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達也と綾香はお互い、思うことがあってもそれを口にすること無くそのままの状態で時間だけが過ぎていった。
__出発前残すところ2時間
流石にもうそろそろ空港に向かわねばならない。
達也は口を開いた
「………じゃぁ。綾香。元気でな」
本当は、何故あんなに急に別れを告げたか。
そして今、何故ここに来てくれたのか聞きたかった。
しかし、達也のプライドがそれを邪魔をした。
「………達也……」
綾香の方も、本当は全てを話してすがり付きたい。
彼のために。そう言い聞かせそれを必死で抑えていた。
綾香は立ち上がり後ろを向き進み始めた達也の腕を引っ張った。
「綾香……?」
びっくりした顔をして綾香の方へ身体を向けた
「……これで、最後だから」
綾香はそれだけ言って達也の唇に自分の唇を軽く重ねた。
「………綾香」
困惑している様子の達也に綾香はまた一言。
「…………頑張ってね。大学合格おめでとう」
綾香はそれだけ達也に残して、その場をダッシュして去っていった。
あんな別れ方をしてしまった達也に綾香は
「本当は好き」それだけは伝えたくて
でも、口に出してしまったら全てを話してしまいそうで
唇に想いをのせて達也にキスをした。
「いってらっしゃい」
綾香は走りながら、達也の顔を頭に浮かべて小さい声でそう呟いた。
その声は、勿論達也には届かない。
達也は彼女を追いかけたい衝動にかられたが飛行機の時間は近い。
達也はグッと気持ちを抑え込み綾香の走り去る背中に
「いってきます」
とこれまた、小さく呟いた__
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