第2章:ただ春の昼の夢のごとし

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 件の図書室の一件(俺はこれを連続図書すりかえ事件と呼称している)が落着に向かい、その後はこれといった事件も起きず、俺は平穏無事に日々を過ごした。  そうこうしているうちに、終業式直後から目下開講中だった地獄の春季講座も八日間の日程を終えた。始業式までは六日ほどしかないのだが、それでも明陵生にとっては非常に貴重な長期休暇の到来である。本来であればゆっくりと羽を休めて来る新学期に向けた英気を養っておきたいところ。誰もがそう思っていると俺は考えていた。  だがしかし、俺は熱しやすく冷めにくい明陵生の性質をはかり違えていたのだった。春季講座の最終日、その終礼直後に事は起こった。 「これでクラスのメンバーともお別れかあ」  クラスのリーダー格的な女子生徒がボソリとそう呟いたのである。まあ、ここまではよくあることだ。二年生への進級とともにクラス分けがなされるため、現メンバーが同じ教室にて授業を受けるのは春季講座が最後。そういう風に考えれば、多少の感慨は禁じ得ないかもしれない。
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