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主の声。
たしかに彼の声だった。
誰を呼んだのか。
きつく抱かれながら、訳も分からず震え、逃れようと声を上げる。
分からない。何も見えない。
おそろしい。
「遥霞。顔を上げろ」
強い言葉が注がれた。
上向かされ、瞳に捕らえられる。
「お前は、ここに居るだろう」
清冽な声がゆきわたり、恐慌が洗い流されていく。
主の身は唇まで冷たい筈なのに、
与えられるそれは熱をもち、強張った身体を溶かしてゆく。
喘ぐように呼吸を繰り返し、やがて震える力も無くして脱力した。
白い部屋。微笑する白い主。
ソファーへおろされ、視線を落とす。
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