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明かりが落とされた客席。
ホールを見下ろす、暗く細い作業通路。
歩き慣れたそこを抜ければ、屋上へ出る。
夜闇のなか、石像が怪物じみて明かりに浮かんでいる。
飾り屋根のかげをたどり、大屋根の上へ。
人が行き交えるくらい、棟の上は広く歩きやすい。
夜露を含んだ風がそよぐ。
大屋根から見える、金色の天使像。
音楽の天使達は、街の明かりを見下ろしてきらめく。
突端に立つ。
足元に、通り抜けて来た丸屋根。
眼下には、まっすぐ伸びる街灯の連なりと石畳。
どこかから、馬車の走る音が聞こえる。
遠くに宮殿。
夜空にちりばめられた星。
僕だけの世界。
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