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 2回戦の最終戦はタツオの出番だったが、今回は危なげのない試合運びを見せることができた。相手は日乃元(ひのもと)拳法の有段者・西之(にしの)直行(なおゆき)だったが、パワーでは互角、スピードと戦術では遥かにタツオのほうが上回っていた。  ジョージに指導されたボクシングのコンビネーションを二度きれいに決めると、タツオは佐竹(さたけ)宗八(そうはち)の最初の試合に習って、足をつかって逃げ切ることに徹した。 「こそこそ尻尾を巻かずに『止水(しすい)』を見せろ。卑怯者(ひきょうもの)!」  カザンが拳(こぶし)を振り上げ叫んでいたが、タツオは一切気にとめなかった。無駄な闘いに必要以上の残酷さは避けたかったし、体力は温存しなければならない。つぎの準決勝では百戦錬磨の軍人と闘うのだ。
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