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序章
王国歴2018年 春の季節半ば。
セリサンセウムの王都において、改めて人攫いにおける法律の″締め直し″とも言われる布告が行われました。
先の平定の後宰相アングレカム・パドリックを始めとして、国王、王妃、法王も真っ先に賛同した法でもありました。
【人攫いに関わった者を厳罰に処す】
厳罰としか記されていないのは、その罪に関わった者を裁く際に事情を鑑みやすい様にする為。
だが、鑑みるとはいっても、もしもそこに人の命を蔑ろにした事が判明したならば、″死罪″免れないものとなりました。
例え、それは″血″を辿っていったならば、国の為に功績をあげた偉人の縁者だろうと構いなく行われるものだと、非情さを″悪魔″とも例えられた宰相が定めたものとなります。
改めての締め直しの布告は、国の東西南北を渡り、そして方角に纏わる話で言えば、この国では、曾て″西の方向に向かう事を禁忌″としている旨がありました。
けれども、先代の国王が平定した後に隊商などの商業隊が西へ向かう事を皮切りに、その方角を禁忌とする考える意識は薄れていきます。
法の締め直しが行われた2018年を過ぎた頃には、もう国の誰も″西を禁忌″とする、そんな話をされることはなくなっていました。
そしてそんなセリサンセウムの西の端の領地ロブロウは、代々ビネガーの姓を人が持つ代表の者が、この土地を治めていました。
この土地にも、布告が届いた翌日、早速″人攫いに関与した者″の処刑が領主の手によって執行されます。
今回処刑を執行される4人は、全て領主の縁者となります。
繋がりを判りやすい言葉で表現するのなら、
先々代の領主の実の娘。
先代領主の姉妹。
そして、現″代理″領主の伯叔母達。
処刑の場所は、罪人である彼女達が幼い頃を過ごした、小高い丘の上にある古い屋敷の、謁見の間となります。
外は、曇天の為に灯りのない暗いその場所は、″代理″領主と、罪人達が初めて出逢った場所でもありました。
4人は横一列に並ばせられ、その後ろに領主に忠実な領民には″領主の影″と言われる年老いた執事と、領主の古くからの友人――傭兵を生業とする胸の大きな女性が立ってます。
執事は魔術に優れ、傭兵は武術に秀でていました。
そして、目の前にいる″仮面をつけた姪″は、自分達がいつも非難していた、″賢者″とも呼ばれていた父の才覚を最も引き継いでいる人となります。
逃げ出す事など不可能なのは、解っていました。
罪人達はきらびやかな貴婦人の衣装のまま、後ろ手に拘束されて、姉妹の内下の3人は血の気を引かせて、震えながら下を向いています。
一番の年上の、領主の唯一″伯母″と呼べる人物が髪を振り乱しながら、″姪″に向かって激昂していました。
「―――こんなこと が許されると思っているの!?」
「―――貴女達は、これまで御自分達がなさった事が赦されると思っていたのですか?いいえ、私が赦してきていたとでも、思っていたのですか?」
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