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海月は菜花を止めると、自分の手を胸に置いて息をつく。 「樋口くん、私、好きな人がいるんですよ?」 「知ってるよ」 樋口が即答して、苦笑いする。 分かってて、どうしてそんなこと言うの? 「だったら…」 「…それで諦められたら、本当じゃないでしょ?」 声が聞こえた方向を見ると、緒川が腕組みをしてこちらを見ていた。 「叶のこと庇う訳じゃないけど、海月だったら相手から他に好きな人が居るって言われて、好きなこと簡単にやめられんの?」 褐色の瞳が燃えるように揺らめいて、自分も同じだと訴えている。 海月はコクリ…と息を飲んだ。
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