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「まだそれ、効いてるんだ」
理紫はそう言って口角を持ち上げたかと思うと、こちらの話が一段落したと取ったのか、海月の方を見ながら、カタッ…と椅子を引いて腰掛けた。
「海月、おいで?」
海月の方から、こちらへ来てくれなければ意味がない。
優しく微笑むと、海月がピクン…と肩を揺らした。
「海月、ほら…」
「……」
手を差し伸べてやっても、海月は理紫の腕の中へ飛び込むことに躊躇している。
理紫は表情には出さないが、ふつふつと沸き上がる怒りを抑えるのに懸命だった。
海月がこんなに頑なになる程、何してくれてんだよ。
俺がどんだけ、大事に大事にしてきてると思ってんだ…。
理紫は小さく息を吐くと、海月に向かってにっこりと笑った。
「…どうしたの?何が怖い?」
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