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「う…、嘘…… 」 海月の顔から、サァーッ…っと血の気が下りる。 けれど、理紫はお構いなしに話を続けた。 「……夜な夜な、あの部屋の前を通ると女の人のすすり泣く声が聞こえるって噂があるんだよ。 昔、寮にいた選手の彼女が振られた当てつけに、ゲストルームに忍び込んで命を絶ったらしい 」 「だっ、だから、そんなの嘘よ! 普通なら、そんな話がある部屋にお客様を泊める訳がない…… 」 「そう思いたい気持ちも分かるけど、じゃあ考えてみてよ。 寮に入りたくて待ってる人は沢山いるのに、どうして滅多にない客の為に部屋を空けておく必要があるの? 実際、俺がここに来てからあの部屋を使うの、海月含めて2人しかいないしね 」 2人……。 話が現実味を帯びてきて、海月は裸の肩を上掛けごと自分の手で包んだ。 「海月の前に泊まった人はさ、やっぱり選手の家族だったんだけど、朝会ったら目の下に隈がすごくて、夜中一睡も出来なかったって言ってた 」 理紫はそう言うと、ギシッ……っとベッドに座る。 そして、そっと海月に手を伸ばすと、瞳を見つめたまま、一束取った髪に口付けた。 「本当に、大丈夫? 」
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