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今宵は満月。
月光が薄暗い森の道を照らし示す。
この森には体に良い薬草が存在している。
けれど最近は人間達もその事に気付き
数年前にくらべれば数は少なくなった。
「……そろそろ、戻るか」
もう十分に収穫した。
当分は事足りる量にぐらいには。
…持ち帰るのは結構骨がいるな、取り過ぎたか。
ぅ゛んー…。
背を伸ばしていると。
不意に己の耳に届いた“何か”
啜り音の様な、声色の様な…“何か”
…ここに今、家臣がいれば問答無用で
屋敷に戻されるだろうが、都合が良い事に
今は誰も居ない…俺だけだ。
今日収穫した薬草籠を背負い直し
その“何か”が聞こえる方へと足を進める。
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