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幹明は結局、テーブルに置かれた肉を全て食い散らかした。辛いものやコッテリしたものなど世界中の肉を集めてもこんなにバリエーションはなかっただろう。満腹になったところで幸世に羽交い締めにされた。
「幹明、飢えていたか」
幹明は、暴れる。
「当たり前だろ?姉さん。俺は化物じゃない!」
ふんわりと百合の花の香りを漂わせて、火李奈が捕まった幹明に音もなく近付く。その手に持っているのはーーハサミだ。
「え?」
幹明は恐怖心と戦った。まさかあんな可愛い女の子が自分をハサミで刺す訳ないじゃないか。そもそも、刺すなら包丁だ。
案の定、最悪の事態は免れたが、幹明のお気に入りの変な青いロゴの入った上着が無惨に切り刻まれた。
幸世は表情を固くしていた。
「幹明、もうその服は洗濯しても綺麗にはなれないとお嬢様は判断なされた」
幹明は初めて幸世に突っかかった。
「俺にやらせば洗濯ぐらいできたのに、何でわざわざ女の子の前で半裸にならないといけなかったんだよ?」
幸世が少し落胆した。
「お嬢様の趣味なのです」
そう、と微かな甘い声がした。火李奈が、年齢にそぐわない色っぽさで幹明の胸元に指を這わせる。
「お兄様は今日から私のもの。これはちょっとしたご挨拶程度よ。毎晩、私と一緒に寝るしかないの、お兄様は」
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