5人が本棚に入れています
本棚に追加
火李奈はしばらく、幹明と抱き合ったままいたが、幹明の首筋にキスすると黄金の瞳に薄っすらと憂いを含んで、立ち去った。
去り際に火李奈は「幸世さんとお食事を取るといいわ。ここの料理には掟があるの。私が起きている間に出される食事は人の脳を眠らせる効果があるのよ。理由はまだ教えられない。お兄様、また深夜にお会いしましょう」と幹明に囁いた。
夜食は昼の5人分のローストビーフと比べると質素なものだった。
「私がいない間に火李奈が来なかったか?」
幸世がサンドウィッチを口にしながら、問う。
幹明は本能的に不味いことをした気分になった。
「来てないよ、姉さん」
サンドウィッチの玉子入りからシーチキン入りのものに変えようとして、ピシャリと幸世に手を叩かれる。
「私はシーチキンが大好きだ」
「俺もだっつうの!」
2人は睨み合う。負癖のついている幹明の方が不利だった。
「火李奈は何で俺をお兄様なんて呼ぶんだ?あんたの話が本当なら、火李奈の方が上じゃねえか」
「では、何でお前は私を姉さんと呼ぶ?それと同じだと思うといい」
それではまるで……言葉が続かない。考えようとすると、頭の中が真っ白になった。
気付くとシーチキンが全滅し、得体の知れない野菜だけのサンドウィッチだけが残っていた。
最初のコメントを投稿しよう!