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幹明はホワイトソースで絡められたパスタを豪雨の音を聞きながら食べていた。
火李奈が時々、眠りに就きそうになりながら、パスタを口にする。時々、喉を詰まらせている様子を見ていると、口に合わないらしい。俺の肉なら嬉々として食うだろうなぁ、と幹明はぼんやり思った。
幸世は安心した表情をしていた。パスタやサンドウィッチは大丈夫ということは何となく分かった。
「晩餐会には肉を食べてもらうわ」
火李奈が甘く囁く。黄金の瞳に何の感情も伺わせない。
「新鮮な肉を調達するつもりなの。大丈夫。多少、脳がやられるけど、最初だけよ。慣れれば、いくら食べても物足りなく感じるぐらいだから……」
火李奈が話を続けようとしたが、途中でパスタを戻した。咄嗟に大きな花瓶を掴んでいた。花瓶の中の花がみるみる萎れていく。
火李奈の涙眼を見ていると、幹明は興奮した。
食後、火李奈の残したパスタの残骸は、幹明が片付けた。吐物や花も捨てた。途中、花の香りの異臭を込める吐物に驚き、触れてみる。熱い。粘着力がある。それは吐物というより未知の液体だった。
不思議と吐物に全く嫌悪感が湧かなかった。これが好きな相手の全てを愛せるという謳い文句の謂れか。
幹明は火李奈を愛していた。
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