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学校に通う道を進む足は重かった。重力に反発しようとして、失敗しているかのように足が動かない。早く行かないと怒られる。それが先生だけなら、まだ余裕はあった。問題なのはあいつらだ。幹明を屋上に呼び出しては罵倒と暴力を浴びせた。
学校を休めば、今度は父が悪意を剥き出しにするだろう。
消えたい、この世から消えたい。
空を仰ぎ見る。真っ青な空だった。
突如、車道で車の急ブレーキが鼓膜を破らんばかりに響いた。
道を横断しようとしていた白猫が内臓と骨を露出させて、美しい顔のまま、死んでいた。
「私は人ではない」
「知ってたよ」
「神でも邪神でも人間でも動物でも天使でも悪魔でもない」
「分かってた」
「お兄様、本当は自分がどうなっているかご存知でしょ?何故、帰らないの?」
幹明は火李奈を抱きしめ、破顔させた。
「君と別れたくない」
火李奈は憐れむ瞳で幹明を見つめている。それでも、幹明の腕から離れた。
「貴方は1人でも生きていける」
幹明は泣き崩れたまま、火李奈の足元で、大理石の床を叩いた。
「そんな訳ねえじゃねえか!だろ?姉さん」
幸世が幹明を軽蔑した。
「みっともないぞ、幹明」
幹明はしばらく泣いていた。そうでもしないと何もかもが怖ろしかった。
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