第1章

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食堂を惨めな男の泣き声が響き渡る。 幹明が平常心を取り戻したのを見計らって、火李奈はそっと幹明の頬を撫でた。会ったばかりそうしたように。まだ3日しか経っていないのに随分懐かしく感じる。 「〝サッシャー〟はね、私の肉体なの。そして、大獄火李奈は〝サッシャー〟の心」 火李奈がふと笑う。 「変な話ね。醜い肉体のまま、心を美しく留めるのは、愛する人に取り憑くためだなんて」 幹明は火李奈をまじまじと見つめた。 「どこかでお会いしましたか?」 「貴方が会った時には私は既に……」 突然だった。 警察と思しき人物がいきなり食堂に乱入して来た。 「お前ら、両手を挙げろ!村の人々をどこへやった?!」 黒い髪に生真面目そうな顔。幹明は一瞬で侵入者を嫌いになった。 トランシーバーに向かってがなりたてている。 「こちら鳴海純一(ナルミジュンイチ)警部補!応援を頼む!吉崎と犬羅をさらった怪力の少女に間違いなし!おい?聞いているのか?白いオカッパに黄色い瞳の8歳程の少女だ!!」 「無駄よ」 火李奈が不敵な笑いを浮かべた。邪悪なオーラを醸し出している。 「ここに辿り着くには私の許可がいるの。貴方は選ばれたのよ」 火李奈は鳴海に近付いて行った。鳴海が銃を構える。 「吉崎と犬羅は無事だろうな?少女だからと言って、手加減しないぞ?」
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