5人が本棚に入れています
本棚に追加
食堂を惨めな男の泣き声が響き渡る。
幹明が平常心を取り戻したのを見計らって、火李奈はそっと幹明の頬を撫でた。会ったばかりそうしたように。まだ3日しか経っていないのに随分懐かしく感じる。
「〝サッシャー〟はね、私の肉体なの。そして、大獄火李奈は〝サッシャー〟の心」
火李奈がふと笑う。
「変な話ね。醜い肉体のまま、心を美しく留めるのは、愛する人に取り憑くためだなんて」
幹明は火李奈をまじまじと見つめた。
「どこかでお会いしましたか?」
「貴方が会った時には私は既に……」
突然だった。
警察と思しき人物がいきなり食堂に乱入して来た。
「お前ら、両手を挙げろ!村の人々をどこへやった?!」
黒い髪に生真面目そうな顔。幹明は一瞬で侵入者を嫌いになった。
トランシーバーに向かってがなりたてている。
「こちら鳴海純一(ナルミジュンイチ)警部補!応援を頼む!吉崎と犬羅をさらった怪力の少女に間違いなし!おい?聞いているのか?白いオカッパに黄色い瞳の8歳程の少女だ!!」
「無駄よ」
火李奈が不敵な笑いを浮かべた。邪悪なオーラを醸し出している。
「ここに辿り着くには私の許可がいるの。貴方は選ばれたのよ」
火李奈は鳴海に近付いて行った。鳴海が銃を構える。
「吉崎と犬羅は無事だろうな?少女だからと言って、手加減しないぞ?」
最初のコメントを投稿しよう!