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火李奈は冷笑し、鳴海に向かって駆け出した。その手には小型のナイフがある。
鳴海は恐怖に顔を歪め、銃を乱射した。しかし、火李奈の体に埋もれた銃弾は火李奈を苦しめることなく、無駄撃ちに終わる。
小型のナイフが鳴海の首を捉えた。身長差など無視するかのように火李奈は跳躍し、頸動脈を的確に探って、一気に力を込める。
鮮血が鳴海の喉元から溢れ食堂の青い絨毯を真紅に染め上げる。
とうの鳴海は何が起こったかサッパリ理解していないようだった。声にならない声を上げて、喉元に手をやる。鳴海の両手に血がベットリ付いて、数分もしない内にショックと体量出血で鳴海は倒れた。目を見開いてピクピク痙攣させるその姿は、捌かれたばかりの魚そっくりだった。
「火李奈……」
幹明は恐怖に包まれた。そうか、やはり火李奈は化物で人間を人間だと思っていないのだ。俺の場合、性欲処理の対象程度にしか思っていないのかもしれない。
失望した。虚しくなった。いっそ、館から出て行って、狼に食べられようか、と考える。だが、そこで火李奈も狼なのに気付いた。火李奈になら、本当の意味で食されても構わない。
トランシーバーから、鳴海を呼ぶ声が聞こえ続ける。幹明はトランシーバーを破壊した。
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