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火李奈が幹明の顎をグイッと自分の唇に近付けると、生の鳴海だった肉を施した。
幹明は口を固く閉じて拒んでいたが、火李奈の舌が強引に入ってき、真っ赤な肉が徐々に口の中を侵食していくのが分かった。
人が人の肉を食べる?
これ程おぞましいことは他に類を見ない。
顔を背けて、必死に拒絶するが、火李奈は幹明の頭を物凄い力で押さえつけて離さない。口元を固定される。2人共、唇を血塗れにして、〝口直し〟が終わった。
鳴海だったものは喉を通らない。
火李奈は邪悪に笑った。
「吐き出したら、今夜も怖いわよ、お兄様」
幹明はからからになった唾を飲み込んだ。血と肉の味がして、アルコールのようなものが、全身を駆け巡った。歯を食いしばりながら、咀嚼する。
もうここまで来たら、火李奈の世界と溶け込むしかない、と腹を括った。いいだろう。カニバリストになって、俺をコケにしてきたヤツらを見返してやる。
今まで存在を消していた幸世が禁煙パイプを吸っていた。
「鳴海純一の死骸を〝サッシャー〟のところに持って行かなくては。私が行こう」
火李奈が微かに拗ねる。
「私でも持って行けるわ」
「では、3人で持って行こう。幹明、文句はあるか?」
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