第2章

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「サウシャーロン様、我々の全てを持ってして貴方の存在を限りなく広大なものにして差し上げます」 伊神はアンダーグラウンドの轟音を愉しむかのようにクロロホルムで寝かせた火李奈を有刺鉄線で縛り付けた。自らの両手に有刺鉄線が引っかかって大分裂けたが、何の興味も引かなかった。 轟音はこれでもか、と言わんばかりに薄暗い地下で暴れ回る。 ドラムをやっているのは、七森(ナナモリ)だ。赤いモヒガンがオレンジ色のスポットライトと一緒にユラユラと揺れる。久城(クジョウ)と氷坂田(ヒサカタ)は交代でボーカルのような声で呪文を唱えていた。 「夢見シ愚カ者ニ祟リアラントスレバ夢ハ血ニ染マリ愛ガ食イ殺スダロウ」 「我ラガ光ヲ見ツケル者共ヨ。行ク末に我ラガ神々ヲ救世主トナリケリ。如何ニモ死ニ伏セン」 伊神が狂気に取り憑かれた顔で火李奈を眺めた。20名程の青ローブの老若男女が跪く。 「如何にも死に伏せん」 伊神の言葉に古の魔力が篭る。 教徒は言葉をなぞった。 「如何にも死に伏せん」 途端に眠り続けていた火李奈が目を覚ます。火李奈は必死にもがいた。 最初はゆっくりだった。炎が火李奈を炙り始めた。青い炎だ。 数時間経っても火李奈はもがくだけで、死ななかった。声一つあげなかった。
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