第2章

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携帯の呼び出し音に耳を傾けていると少しは不安が安らいだ。幹明は幸世を頼り切っていた。 「姉さん……俺、とんでもないことやっちまった……」 携帯が繋がった途端、涙が溢れ出した。 幸世が厳しく言う。 「話せ」 「喧嘩してたら、その隙に火李奈が攫われた」 「どんなヤツにだ?」 「青ローブを着ていた」 幸世が絶句する。少し間が空いてから、説明し出した。 「それはサウシャーロン教団の1人だ。おそらく喧嘩をふっかけてきた相手も教団の1人だろう。お前は罠にかかったのだ」 幹明は大声で怒鳴った。 「サウシャーロン教団だか何だか知らないけど、火李奈は無事なんだろうな?!姉さん、なんで、外に行けば狙われるなんて大切なこと教えてくれなかったんだ?!」 幸世がポツリと呟く。 「伊神篤志」 幸世には珍しく悔し気な様子だ。 「ヤツはもう魔力を持っていないはずだった。それが何故?」 「俺に分かる訳ねえだろ?」 喫茶店で待ち合わせだ、と幸世が言った。名木沢喫茶店はかなり待ち合わせにはベターな場所だった。 遊園地から徒歩で30分程かかる。それでも、幸世より先に幹明が辿り着いた。 アンティークなムードの中、1人ソワソワとホットココアに口を付ける。あまり、1人には慣れていなかったし、1人の時間を楽しむ余裕の欠片もなかった。
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