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ホットココア3杯目を飲み、涙の味を味わっていた時、幸世が訪れた。森を走り抜けたのがよく分かるようにご丁寧に髪や服に小枝や葉を付けていた。顔色は芳しくない。
「いいか、幹明。これから大事な話をする。火李奈お嬢様の正体も何故、お嬢様がお前を選ぶのかも分からない。ただ言えるのは、伊神篤志がお嬢様を使ってやろうとしていることは、死者蘇生であり、皮肉にもマジシャンだったサウシャーロンの死者蘇生術は失敗している。多くの人命が奪われるだろう。この魔術は死者を蘇生させる代わりに生の人間の血肉が必要なのだ」
幹明は目を擦った。
「火李奈はどうなる?」
「連中はまだ気付いていない。お嬢様は心だけで本体は〝サッシャー〟として館の地下にいるということに」
「助けられるのか?」
「助けられるだろう。しかしーー」
幸世が虚ろな目を幹明に向けた。こんな姉を見るのは初めてだった。
「私は死ぬかもしれない」
幹明は居た堪れず目をカッと見開いた。
「何を言っているんだよ!!」
幸世が目を瞑り額に手を当てる。
「有りのままのことだ」
少し幸世の口元が卑屈そうに歪んだ。
「お嬢様と〝サッシャー〟が一体化すれば、教団など皆殺しできるだろう。ただ、〝サッシャー〟の魔力源の黄金の石は〝サッシャー〟の中に入り込まないと手に入らない。〝サッシャー〟は硫酸でできている。どういうことか分かるか?」
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