第1章

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何度も緑の線がグルグルと回って寄生虫のように蠢く。吐き気がするのに腹も心も満たされない。全身を重い鉄の鎖で縛られて、周りは糞尿の悪臭で耐えられるのが我ながら不思議だった。 彼女はまだ8歳頃に見えた。ロリータフェイスにパッツンはとても魅力的な雰囲気を醸し出していた。ただ残念なのは彼女の髪が脱色し切っていて、端正な容姿に関わらず彼女を異物な存在になり染めていた。 黄金の瞳が光る。 竜や爬虫類を連想させるそれは、鋭くも獰猛で、ロリータフェイスとミスマッチしていた。 それでも、幹明が初めて感じたのはギャップ萌えと、甘い自分でも分からない暖かな感情だった。まるで、母が自分に向けた目で初めて人を見ていることに自らが驚愕した。 館を案内したのは幸世だ。 深い森の中、今にも逃げ出しそうな幹明を片手で抱えて、3キロ程、歩いて来た。幸世に疲れた様子は微塵も無かったが、幹明は狼男の幻想に囚われて、ビビって声も出せなかった。 木のシワが人の顔を形作っているように見える。今にも木々がざわめき動き出しそうだ。 こんな木々燃やしちまえばいいのに、と幹明は思った。俺を怖がらせるヤツは全部変な姉さんに葬られろ。 邪悪な一本の大木が「いつになったら目を覚ますんだ?」と地獄の底から響くような声で囁いた気がして、幹明の背筋は凍りついた。
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