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幸世はカルピスウォーターの氷をかき混ぜた。カランカランと軽やかな音と裏腹に幸世の心は重い。
「私がサウシャーロン教団のテロ対策組織に関わっているのは知っているな?私の主人、サウシャーロンは伊神や七森や久城や氷坂田に自分の力を利用されるのを防ぐため、私に魔力を奪う才能を与えた」
幹明は涙を乱暴に拭い、キッと幸世を睨み付ける。
「サウシャーロン教団が何故アンタじゃなく火李奈を狙うんだ?」
「伊神はまだ私に魔力を奪われているのに気付いていない。全ては、だが。お嬢様は私の命を持ってして助ける。お前は私の弟として何も聞かなかったことにしてくれ。ただしーー」
幸世が言いにくそうにする。
「お嬢様はもう少女の姿を保てないだろう」
幹明はゾッとした。火李奈が一生あの地下室の化物になるのか?
「俺が行く」
幹明は自分でも驚くぐらいハッキリとした口調で言い放った。元の火李奈を取り戻すなら死んでも良かった。
案外、アッサリと幸世が承諾する。
「まず黄金の石を取るのに硫酸の海に入る者がいる。次に黄金の石をお嬢様に届ける者がいる。2人共必要なのだ。そして、2人共死亡率は高い」
幹明はへへへと笑った。きっと死ぬ。それでも火李奈の側に行き、再び抱き締め、また今日の美しい少女の香水に身を包まれば、死ぬ価値があった。
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